胸水が溜まり乳び胸と診断、そして中皮腫の疑い、他に脾臓に3センチの腫瘍…。
2024.10.28 Mon.

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呼吸が苦しそうになり、検査を受けた結果――胸と心膜にリンパ液が溜まる「乳び胸(にゅうびきょう)」を発症していることがわかりました。さらに、胸膜に発生する悪性腫瘍「中皮腫(ちゅうひしゅ)」の疑い、そして脾臓には直径3センチの腫瘍も発見されました。
診断から間もなく、心膜切除・胸管結紮・乳び槽切除・脾臓除去という大きな手術を受けることになりました。
▽乳び胸 (にゅうびきょう)
胸腔内にリンパ液(乳び)が漏れ出し、胸水として溜まってしまう病気です。犬では比較的まれで、原因が特定できない「特発性乳び胸」が多いとされています。犬よりも猫に多く、特に柴犬での発症は非常にまれで、明確な統計はほとんどありません。
▽中皮腫 (ちゅうひしゅ)
胸膜・腹膜・心膜などの「中皮細胞」から発生する悪性腫瘍で、犬全体でも極めてまれな腫瘍です。発症率は0.02%未満(1万頭に2頭以下)とされ、柴犬に限ると症例報告がほぼ皆無に近い、統計的にも確認が難しいほどの珍しさです。
このあと、実際に琥大朗の身に起きた症状、診断に至るまでの経緯、そして手術から術後の様子までを記していきます。少し長くなりますが、同じ病気と闘うワンちゃんや飼い主さんの参考になればと思います。
9月中旬ごろまで 体調の変化に気づく
この半年ほど、年齢のせいなのか、それとも夏の暑さのせいなのか…散歩やお出かけのときに、以前よりも早くバテるようになってきた気がしていました。
「まあ、年も重ねてきたし、暑いし、そんなこともあるよね」と思いつつも、少しだけ気になっていました。
そして、この1週間ほどは、抱っこしたときに鼻から「スー…」という呼吸音が聞こえることがありました。
ほんのわずかな変化で、ちょっとした違和感でした。
9月22日(日)夕方 足の痛み?散歩中の異変
いつものように散歩へ行こうと、玄関まで抱っこで連れて行き、床に下ろした瞬間、「キャン!」と短く痛そうな声を上げました。何が原因なのか分からず、ただ少し高めの位置から手を離してしまったので、「もしかして足に負担をかけてしまったのかな?」と思いました。
散歩中は足をかばうように、ゆっくりトロトロと歩く姿。途中から少しずつ普段の歩調に戻ってきたため、その日は病院の閉院時間も過ぎており、様子を見ることにしました。
ところが夜中、体のどこが痛いのか確かめようと全身をそっと触っていくと、股関節あたりに触れた瞬間、またも「キャン!」と鳴きました。
その反応に「もしかすると脱臼かもしれない…」と考え、翌朝、病院へ連れて行くことを決めました。
外傷がないことも確認




獣医師に見せるために撮影。トロトロ歩き
9月23日(月・祝)朝 病院での診察・痛み止め処方
朝起きたときは問題なさそう


翌朝、開院時間に合わせて一番で病院へ。
まずは股関節から足にかけてのレントゲンを撮影し、骨や関節の状態を確認しました。結果、はっきりとした異常は見られず…。
先生いわく、「一度脱臼したものの、戻った可能性もありますね」とのこと。ひとまず骨折や大きな損傷はなく、胸をなでおろしました。
この日は痛みを抑えるため、痛み止めを処方してもらい、様子を見ていくことになりました。
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処方薬 ・痛み止め
9月24日(火)〜27日(金) 経過観察
普段は室内で排泄をしない琥大朗が、この期間中に室内で排尿・排便をしてしまいました。
便は泥状で、体調の変化を感じさせるものでした。
「もしかして、処方された痛み止めが合わなかったのでは…?」と考え、この時点で薬を中止して様子を見ることにしました。
すると、徐々に水分摂取量も戻り、食欲も改善。
体調が上向いてきた様子に。
――けれど、この後に起こる大きな異変の前触れだったことを、この時の私はまだ知る由もありませんでした。
9月28日(土)夕方 呼吸の異変・胸水の可能性
夕方ごろ、突然起き上がり、お座りの体勢のまま呼吸が少し乱れる琥大朗。
先週の出来事も頭をよぎり、すぐに近所の動物病院へ駆け込みました。
先週の診察内容を伝え、今回は胸からお腹にかけてのレントゲンを撮影。
すると、胸部から腹部にかけて白いモヤのような影が広がっていることが判明しました。
先生の説明では、「胸水、もしくは気管支炎からくる肺炎の可能性」とのこと。
咳が出ていないことから、胸水の可能性の方が高いと考えられました。
胸水の場合、一般的には利尿剤で体内の余分な水分を排出していく保存療法や、症状や原因によっては外科的に胸水を抜く処置・手術が選択肢となります。
今回は急を要する状態ではなかったため、まずは薬による経過観察となりました。
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処方された薬
・プレドニゾロン(ステロイド剤)
・ビオスリー配合錠(整腸剤)
・アモキクリア錠(抗生物質)
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数日間は薬が効いたのか、呼吸も落ち着き、体調も安定しているように見えました。
――この時に振り返れば、このときの足の痛み、食欲不振、室内での排泄といった一連の症状は、すべて胸水による影響だったのだと納得できます。
立ち上がったあとの呼吸の様子。獣医師に伝えるために撮影。
10月4日(金)夕方 立ったまま呼吸困難
この日は、なぜかいつもと違う場所で眠っていた琥大朗。少し違和感を覚えつつも、何度か様子を見に行くと普段通りにしていたので、そのままにしていました。
ところが夕方ごろ、足音が聞こえてきたので覗いてみると――
あれ…!?
立ったまま、首としっぽを垂れ下げ、呼吸が早く苦しそう。
声をかけても、そっと触れても、まったく反応がありませんでした。
獣医師に説明のために撮影

慌てて先日と同じく近所の動物病院へ駆け込みましたが、この日も薬で様子をみるしかない状態。
原因や根本治療のため、大学病院を紹介してもらうことになりました。
ただし予約は2週間後…。
それまで持ちこたえられるのか、不安でたまりません。
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処方された薬
・プレドニゾロン(ステロイド剤)
・ビブラマイシン(抗生物質)
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このあと、薬のおかげか一時的に落ち着いていましたが、木曜日ごろから日中も呼吸が荒く、息切れのような様子が見られるようになってきました。ただ、食欲はあり、睡眠もちゃんととれています。
あと1週間、なんとか持ちこたえられますように…。
10月12日(土) そして…耐えきれず呼吸困難に
夜明けごろ、琥大朗は寝られずにお座りのまま、呼吸が荒く静止していました。
少し落ち着いて眠り始めましたが、お昼頃には再び呼吸が乱れ、口を開けて舌を確認すると青白くなり、チアノーゼの状態に。
これはただ事ではないと感じ、日常通院している中規模の動物病院へ急行。病院到着と同時に獣医の判断で酸素吸入が始まりました。
普段は予約順でかなり待つ病院ですが、この緊急事態で優先的に対応してもらえ、危機感がさらに増しました。
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チアノーゼとは?
犬の口や舌の粘膜が青紫色や赤紫色になる状態で、血液中の酸素が不足していることを示します。
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獣医師に伝えるために撮影
最初のレントゲンとこれまでの経過を伝えた上で、再度胸部・腹部のレントゲンを撮影。胸水を注射器で抜いて検査したところ、乳白色の液体が確認され、乳び胸の疑いが濃厚と診断されました。
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乳び胸とは?
胸腔内に脂肪を含んだリンパ液(乳び)が溜まる病気です。胸水が溜まる原因は様々ですが、原因が特定できない場合は「特発性乳び胸」とされ、生涯付き合う必要があることもあります。
胸水を抜く処置は、局所麻酔で肋骨の間から細い針を刺して行うため、危険を伴います。
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既に夕方で通常の入院は難しく、夜間は無人になるため、24時間営業の動物救急センター(ER)へ紹介されることに。検査結果やカルテを持ってすぐに移動しました。
はじめてのER
到着後すぐに酸素吸入と緊急処置が始まり、問診・検査後に約2時間ほど待機。この間の記憶はほとんどありません。
結果、胸水による肺の圧迫でチアノーゼが起きていたことが分かり、胸水を抜く処置が行われました。
なんと、抜かれた胸水は約1,500cc(左650cc、右870cc)!これでもまだ胸に残っているとのこと。
胸水は乳褐色で濁っており、乳び胸の特徴を示していました。
※背景を切り抜き処理しています

一度に大量に抜くのは危険なため、大学病院での本格治療を希望し、ERでは応急処置として一泊入院。
次の日の夕方お迎えに行くまでにさらに500ccが抜かれ、呼吸は落ち着いたとのことです。
ERでは、私たちの希望する治療方針を獣医に伝えました。
「1週間後に大学病院を予約しているので、できればそちらで本格的な治療を受けたい」
「それまで何とか持つように、応急処置で安定させてほしい」
ERでは、あくまで応急処置として酸素吸入と胸水の一部除去を行い、琥大朗の呼吸が落ち着くよう対応してくれました。
その間、私たちは「大学病院まで持ってくれますように」と、祈るような気持ちで見守るしかありませんでした。
10月18日(金) 大学病院で診療
なんとか1週間、無事に過ごすことができ、予約していた大学病院で診療を受けました。
ここまでの経過:
足の痛みの疑いから始まり、呼吸異常、ERでの応急処置まで
を詳しく医師に説明しました。
検査と処置の結果、やはり早急に手術が必要との診断。
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▽検査と処置
・乳び胸 除去
・心嚢水 除去
・超音波検査 胸部+腹部
・CT検査
・X線撮影 など
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さらに、脾臓に直径3センチほどの腫瘍が見つかりました。
外から針を刺して組織を調べない限り、良性か悪性かの判断はできません。
もし悪性だった場合、腫瘍が飛び散って転移する可能性もあるため、全摘する方針となりました。
対応する手術は多岐にわたるため、琥大朗の体力が心配とのこと。
場合によっては、手術中に途中で中断する可能性もあると説明を受けました。
よっぽど大変な病気だったんだね、と改めて実感。
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▽手術内容
・心膜切除
・胸管結紮
・乳び槽切除
・脾臓除去
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ありがたいことに、翌週火曜日に手術の時間を作ってもらえることになりました。
ようやく具体的な治療方針が決まり、ひとまず安心しつつも、手術までの日々を待つことに。
まるで、強い味方が仲間になったかのような、そんな気分でした。
その後、手術の日まで問題なく生活出来ました。





10月22日(火) 手術当日
ついに手術当日を迎え、琥大朗は元気に朝を迎えることができました。

朝の準備を済ませ、大学病院にお預け。
手術と経過観察の状況次第で退院予定となり、手術が終わり次第連絡をもらうことになっています。
なんとか無事に終わることを祈ってるよ、琥大朗がんばれ!
手術が無事に終了し、ご連絡いただく
開胸後、一時的に呼吸が荒くなり大変な状況になったものの、心膜切除によって呼吸が落ち着き、予定していたすべての手術が無事完了して、麻酔から覚めた後は元気な様子。
手術で摘出された心膜・縦隔・脾臓は、病理解剖に出され、今後の診断に役立てられる予定。
退院は経過次第ですが、来週あたりになりそうだと先生とも話していました。
とりあえず良かった!
10月24日(木) 退院のご相談の電話
突然電話が鳴ったので、「何か問題があったのか…」と、一瞬冷や汗。
内容は、琥大朗の退院についてのご相談。
病院から「元気すぎるので、退院しても大丈夫ではないか」という連絡でした。
小さいころから動物病院が苦手なことや、わんこ見知りな性格もあって、病院ではずっとそわそわしていたのかと。
検査の結果、退院しても問題ないとの診断でした。
飼い主としての正直な感想は、「え、早すぎない…?」という気持ち。
ここで帰ってきて何かあったらどうしようと考えると、もう少し入院していてほしいけど、病院側も大変だろうなと思いすぐにお迎えに。
土日は大学病院がお休みなので、「あー、怖い…」
家に変えろうね!

病院で簡易的に作ってくれた術後着




この服の中には、このあとも乳び胸が再びたまる可能性があるため、毎回胸に針を刺す負担を避けるために、手術で胸腔内から外へつながるチューブを入れてもらい、背中で固定しています。
10月26日(土) やはり息が苦しそう…
予想していた通り、琥大朗の呼吸が苦しそうな様子に。
近隣のホームドクターに診てもらい、背中のチューブから乳び胸(胸水)を抜いてもらい、なんとか安定。
手術しても胸水はすぐには止まらないとのことで、また何かあればすぐに通院します。
10月28日(月) 病理組織診断の結果
手術で摘出した組織の病理診断の結果、中皮腫の疑いがあることがわかりました。
今後は抗がん剤による治療が必要とのこと。
幸い、胸腔内につながるチューブがあるため、そこから薬を入れることができ、副反応はさほど心配ないとの説明でした。
この後の経過
琥大朗はその後、2週間おきに病院へ通院し、チューブから抗がん剤を投与する治療を続けていました。
体調は全く問題なく、元気に過ごすことができ、胸水もたまらなくなりました。
しかし、1か月後の散歩中にチューブが突然外れてしまうハプニングがあり、急遽病院へ。
検査の結果は幸い問題なく、苦しい状態になる可能性があったのに何もなく、本当に安心しました。
チューブがなくなったことで抗がん剤投与はできなくなったため、この時点で治療は一旦中断。
今後は1か月おきのレントゲン・CT検査で様子を見ることになりました。





